月の裏側 |
ガーデンのバルコニーで2人並んで夜空を見上げてる。 と言うより、さっきから俺は夜空よりも隣にいるリノアのことばかり気になってる。 「ねえ、スコール。お月様ってきれいだよねぇ〜。」 彼女は俺ほどこの状況が気になってないみたいだ。こういう雰囲気になれてるって事か?異性とのつきあいに不慣れな俺はちょっと焦りを感じる。 「あんなきれいなところに一緒に行ってたのに、もったいないことしちゃったね〜。もっとロマンティックなことが起こればよかったのにさぁ。」 さっきの言葉になんと返事をすればいいのか迷っているうちに次の言葉・・・。俺の返事は必要ないって事か? 「あの時はあれで精一杯だったから・・・。一緒に帰ってこられたんだからそれでいいじゃないか。」 やっと口から出た言葉、ちらっとこちらを見上げるリノアの表情からは俺は何も読みとることができない。俺の返事は合格点がもらえたんだろうか?こんな事気にしてる自分が嫌になる。 「ねぇ、月の裏側って見てみたくない?」 「月の裏側?」 「そう、地球からは絶対に見えない裏側。」 「・・・さぁ・・・。」 どうして彼女は俺を混乱させるようなことばかり言うんだろう。サイファーならこんな時なんて返事をするんだ?さっきの「ロマンティック」という単語にたぐり寄せられるように奴のことが頭をよぎる。 『恋、してたと思う。』 前に聞いた言葉が急に気になってよけい混乱する。また奴に何かが起こったら、『かわいそう。』なんて言いながらついて行ってしまうんだろうか?言葉探しがますます難しくなる。 「お月様はさ、やさしい光でいつも地球を照らしてるじゃない?黙って微笑んでるみたいに。そんなときに、私ったらよけいなことが気になっちゃうんだ。地球に見せない方の裏側はどんな顔してるのかなって。」 「・・・そんなこと、考えたこともないな。」 「たぶんそんなこと思いながら月を見てる人って私くらいのもんだと思うけど・・・。 でもね、私は全部知りたいの。裏側の顔でも私に微笑んでくれるのかどうか。」 難しいな。謎かけか?どんな答えが望みなんだ?どうしたらこの問いかけに正解で答えられる?どんな返事をしたらリノアの心を俺のものにできるんだ? 彼女は夜空を見上げていた顔をゆっくりとこちらに向ける。 頼む、もう少し考える時間をくれ・・・。 「スコールは?」 「・・・え?」 「スコールは笑ってくれてる?私に見せてくれない方の顔でも。」 「・・・?」 「最近ね、やっと解るようになってきたの。つまんなそうな顔してても、ちゃんと私を見ててくれてるって事が。なかなか笑ってはくれないけどね。」 「悪かったな。笑うのは得意じゃない。」 「知ってるよ、そんなこと。ただね、スコールがただでさえ見せない心のそのまた奥では私のことどう思ってるのかなって・・・。」 ・・・そういうことか・・・。でも、なんて言えばいいんだ? 「ふぅ・・・。」 「あ〜ぁ、とうとうため息つかせゃった!ごめんね、もういいや。言葉はめんどくさくて難しいよね。特にスコールには。」 「悪いな・・・。」 「いいの。その代わり私が合図したら心の奥の顔見せてくれない?」 「合図?」 「そう、合図。2人にしか解らない、始まりの合図。」 そう言うとリノアは右手の人差し指をたてて俺に微笑んで見せた。 俺はもう言葉を探すことから解放されて、心の思うままに微笑んで彼女を抱きしめ、キスするだけでよかった。 |
トロイネコ
2001年11月20日(火) 23時17分03秒 公開 ■この作品の著作権はトロイネコさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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この作品の感想です。 | ||
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いいですぅ〜 | ココ | ■2002年01月06日(日) 13時05分53秒 |
ありがとうございます。ステルスさんに褒めていただけるなんて・・・。8のエンディングは人気が高いので感想頂くのが怖かったです(笑) | トロイネコ | ■2001年11月23日(金) 19時36分44秒 |
いいですね〜(^^)スコール君の性格がよく表されていますね! | ステルス | ■2001年11月22日(木) 19時06分51秒 |
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