祈り |
エアリスの精神は、一つのライフストリームのうねりとなって、 限りなく、星の全てに拡散していった。 星のいたるところを覆い、通り抜けて、エアリスは星の中を走りぬけていた。 エアリスに憂いは全くなかった。星から垣間見えるメテオの存在すら、たいしたことではなかった。彼女にとって大切なことは、星を駆けめぐり、全てを癒すこと―。 拡散しつづける意識が、徐々に集まり始めていた。 彼女の理性は次第に回復していったが、その心は生まれたばかりの赤ん坊のように純粋で無垢なものだった。 星の傷跡から、汚れのない真っ白な光が放たれたのを感じて、エアリスはそっと目をあけた。メテオが見えた。その大きな塊は、白い光さえも飲み込もうとしている。まだ集まりきっていない彼女の精神を通して、地上の数え切れない憂いが伝わってくる。エアリスはそれを、何を考えるのでもなく、半開きの目でぼおっと見つめていた。 別に、自分や、星の危機を感じていたわけでもないのに、薄まった彼女の心はひどくざわざわした。 いったい、何のために――。 そのとき、何かが見えた。ライフストリームと同じ光を持つ瞳。彼は飛空挺からこの世の終わりである光景を見下ろしていた。 ――誰?―― エアリスは顔をしかめた。誰?誰なの―? 自分自身に何度も問い掛けるが、薄まりすぎた精神は、その答えを出す事さえでいなかった。ただ、その人物からも、何かが伝わってきた。他の人とは違う、気持ち。 ―エアリスの願いを・・・― そう聞こえ、エアリスは目を見開いた。 そしてその瞬間、エアリスは彼を見た。 彼も、エアリスを見た。 永遠ともいえるその一瞬、二人は見つめあったのだ。 「クラウド」 エアリスは笑った。 「星、救うんだよね」 クラウドは今、何が起こったのかよくわからなかった。誰かが、自分を見ていた。確かに、俺もその誰かを見た―。白い、光が。 「クラウド!」 ティファにそう呼ばれ、地上の光景を見たクラウドは、言葉を失った。 地上のいたるところから、淡いグリーンの光があふれ出ている。それらはホーリーとメテオに向かって、うねり、もつれ合って、より濃くなっていった。 「ライフストリーム・・・」 ライフストリームは地平線の向こうから延々と沸きでてきているようだ。 地球全体が輝いている。星の命が、輝いている。 呼ばれた気がして、クラウドは顔を上げた。その瞬間、クラウドの瞳に、強いヴィジョンが焼き付いてきた。それは、ほんの1、2秒の間の出来事だった。 見覚えのある少女が、淡い、グリーンの光の中で、ゆっくりと顔を上げ、まっすぐにクラウドを見つめていた。少女は、笑っていた。 そのとき、ホーリーとライフストリームが融合し、まばゆい閃光が走った。飛空挺にいる誰もが目をつむった。ただ、クラウドだけは完全に目を閉じてはいなかった。大切な何かを見逃すまいとでもするかのように―。 だが、少女は消えていた。 白い光はますます強く輝き、クラウドの視界までもかき消す。 少女は薄れていく意識の中で、つぶやいた。 “ありがと、ね” 星は白い世界に包まれていた。 |
ひかこ
2001年11月20日(火) 23時17分48秒 公開 ■この作品の著作権はひかこさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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この作品の感想です。 | ||
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クラウドのカッコイイシ−ンが伝わってくる〜!!いいです!!感動〜!! | ガイツ | ■2001年12月23日(日) 10時56分40秒 |
最後のありがとねという言葉が感動しました | ふみ | ■2001年12月08日(土) 03時50分53秒 |
初めて書いてみたんですけど、感想くれれば嬉しいです。 | ひかこ | ■2001年11月23日(金) 22時33分07秒 |
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