影は闇に脱ぎ捨てて〜第一章〜
ゴゴゴゴ・・・・ゴゴゴ・・・・

ガレキの塔が崩れ始めている。俺も、もうすぐ相棒の所に行くんだな・・・。

激しい揺れに身を任せながら、俺は静かに目を閉じた。相棒に、会いに行くために・
・・。

そういえば・・・・・

目を閉じると、あることを思い出した。ガレキの塔入る前にエドガーと交わした、最後の会話が・・・・・・。

「・・・リルムの本当の親は、君じゃないのか?シャドウ」

ガレキの塔に向けて出発する前の夜、酒場で一人酒を飲んでいると、エドガーがやってきて突然そう言った。

「・・・何故そう思う?」

動揺を隠して、なるべく冷静に聞いた。

「まず最初に、インターセプターのことだ。お前以外になつく事が無いはずのあいつが、何故かリルムにはなついている。次に、あの指輪だ。リルムの家で見つけた、リルムの母親の形見の指輪と同じタイプの指輪だが、君のサイズとピッタリだった。そして、実はその指輪に、決定的な掘り込みがあったんだ」

エドガーは袋から指輪を取り出すと、リングの内側を俺に見えるように差し出した。

「“クライド”。ストラゴスから聞いたんだが、リルムの父親の名前らしい。彼は純粋なサマサの人間でなくある日突然迷い込んできた旅人ということで、サマサの人からはあまり良く思われていなかったらしい」

「そいつがどうしたんだ?」

自分でもイライラしていることは感じていた。それでも出来るだけ冷静に言い放っ
た。

「そのクライドがサマサの女性と恋に落ち、二人の間には子供が産まれたそうだ。しかし、他人とのかかわりを特に嫌うサマサの人達はもちろん怒って、彼を追い出した。その後、その女性はその子供を“リルム”と名付けたそうだ・・・・・・」

「だからそれがどうした!」

思わず声を荒げてしまった。感情を常に殺す努力をしているつもりだったが、この時ばかりは抑えきれなかった。まったく、らしくない。

「・・・落ち着いて聞いてくれ。そのクライドという男だが、彼はどうやら強盗のようなものをしていたらしい。彼の持ち物にはそういった専門の道具らしきものが多かったそうだ。そして、ちょうど同じ時期に列車強盗で知られていた強盗グループのメンバーが捕まった。彼の証言で、もう一人いるメンバーの名前がわかった・・・・クライドというそうだ。そして、その列車強盗グループの名前は、“シャドウ”・・・・・どうだ?」

自信を持ったエドガーの言葉だった。

「そのクライドというのが俺で、その時の列車強盗グループの名前を、俺の名前にしているとでも言うのか?くだらないな・・・全部推測でしかない。俺はもともと暗殺者を生業としているのさ。誰かの親なんかじゃない」

とうの昔に捨てた本名を出されただけでなく、昔のことをあれこれと詮索され、これ以上この場にいたくなかった俺は、席を立った。 

ドアに向かって歩いて行く時、奴は最後にこう言った。

「シャドウ。君も薄々感づいているはずだ。この戦いで、誰が死ぬかわからない。お前やリルムだって、決して生きて戻るとは限らないんだ。今出来ることは、今やっておけ。私達は、今そういう状況に立たされているだ。それを、良く考えておいてくれよ」

「・・・・・・・・・・・」

何も言い返すことが出来なかった。

確かに、初めてあの娘を見たときから何か他の奴と違う雰囲気がしていた。よく見れば、あいつに良く似ているように見える。しかし、もう俺の手は汚れてしまってる・・・・・もし仮にリルムが俺の娘だとしても、今さらどんな顔をして、親であることを打ち明けなければならないんだ・・・・・俺にはわからない。

そんなことを考えながら、俺は夜の闇に吸い込まれていった。

確かめたい・・・あいつが、リルムが俺の娘かどうか・・・直接聞いて・・・でも、もう手遅れだな・・・・

そう思ったその時だった。

ゴゴゴ・・・ゴゴ・・・ゴ・・・・・

・・・揺れが弱まっている?今だったら逃げ出せるかもしれない。

俺は立ち上がった。

(ビリー、急で悪いが俺はやらなくちゃいけないことが出来たらしい。今しなくてはいけないことが。もう少しだけ待っていてくれよ。このまま死んだら、お前に顔向けできても、あいつに顔向けが出来なくなる)

俺は走り出した。最後にしなくてはいけないことを、するために・・・・・
CHIKO
2001年11月20日(火) 23時25分44秒 公開
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■作者からのメッセージ
変に長い文章になりそうなのでいくつかに分けることにしました。自分勝手な話になりそうですみません。

この作品の感想です。
なんかちょっと切ないなぁ(*^_^*)でもそれとなく感じが出てて感動しちゃいました(*^_^*) ガイツ ■2001年12月23日(日) 10時54分34秒
続きが気になるよ〜〜vv ゆら ■2001年12月17日(月) 16時43分47秒
キャラクターが、必要最低限の動きしかしてないのがちょっと惜しい。もう少し、動きを多彩にしてみませう。でも、なかなか上手い。次作に期待。 Urd ■2001年12月12日(水) 21時56分26秒
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